音響効果の専門技術と規格j統一化で躍進するDOLBYという企業

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dolby

DOLBYという名前を聞いたことはあるでしょうか。1970年代、1980年代にカセットテープを使っている頃はとても身近な名前で、カセットテープ特有の「サー」というヒスノイズを軽減するための仕組みとしてカセットデッキやラジカセに搭載されていました。

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DOLBYの創業

このDOLBYという名前は、1965年に「ドルビーラボラトリーズ」を創業した、レイ・ドルビー氏の名前からとられています。

DOLBYサラウンドから映画へも進出

MDやMP3といった別の媒体が主流になるにつれてカセットテープは身の回りからなくなっていきました。カセットテープがなくなるに伴って、DOLBYの名前を目にすることもなくなっていったのですが、唯一、オーディオビジュアルに凝っている人は、自宅の部屋に4つ以上のスピーカーを配置してサラウンドを体験するときに、サラウンドプロセッサーにDOLBYの名前を見ることができました。いわゆるDOLBYサラウンドです。ステレオの2chの音声の中に背後から聞こえる音も仕込んでおいで、サラウンドプロセッサーを通すと背後の音が分離されて後ろのスピーカーから鳴らすことができるようになっていました。

1992年にはドルビーデジタル5.1ch採用の映画が公開されたことで映画館でもDOLBYの名前を見るようになっています。さらに、ドルビーデジタルはDVDやBlu-rayのビデオソフトにおける標準コーデックに採用されるほどメジャーになっています。

このように音に着目した専門性を武器に世界的に通用する規格を作り売り上げにつなげていくビジネスモデルというのは、とても面白いと思います。

以下は2004年にDOLBYに関して公開した内容です。

【2004年8月1日公開】

「ドルビー(DOLBY)」のこれまでとこれから

ITのニュースサイトにDOLBYの今までとこれからという興味深い記事が載っていました。

振り返ってみると、私が小さいときにはDOLBYという会社は単純にDOLBY B TYPE ノイズリダクションシステムを各社にライセンス提供しているだけの会社のように見えて、確かに当時としては、各カセットデッキにDOLBY B TYPEだけは搭載されていたので、友人とカセットテープをやりとりするときには都合が良かったのを覚えていますが、何となくそれだけの会社にも見えていました。

ノイズリダクション規格(DBXやADRESS)の濫立

当時はDBXなどの強敵も現れていて、DOLBYは結構危ないんじゃないかな?と思っていたところ、DOLBY Cタイプというノイズリダクションシステムを新たに発表して、これが業界標準となることにより、また盛り返してきたと思います。

当時、私は東芝(AUREX)のカセットデッキを持っていたため、当時は東芝だけが提唱していたADRESS(アドレス)というノイズリダクションシステムを使用していて、これで録音したカセットテープは、今となってはダイナミックレンジが低くカシャカシャとした音にしか聞こえないカセットテープになってしまいました。

こういうメーカー間の規格争いは、製品発売前であればドンドンやってもらって構わないのですが、製品が発売されるころに向けては統一化に向けて動いて欲しいところです。

DOLBYサラウンド

一方、映画の音声のほうも、2chの中に後方の音声もマトリックス技術で詰め込んだ「ドルビーサラウンド」が一般的になってきました。当時はDOLBY SURROUND機能付きのAVアンプやサラウンドプロセッサーなるものがいろいろと発売されて、私も幾種類かの製品を購入しました。最初は純粋なオーディオマニアもサラウンドとはいかなるものか試してみたくて、オーディオアンプに外付けでサラウンドプロセッサーを接続してみるというのが一般的な使い方だったような気がします。

このドルビーサラウンドの良いところは2chの中に後方の音声を追い込んでいることそのもので、このおかげで、普通のSTEREO対応機器であれば、この音声を保存しておくことができました。テレビで放送される映画もSTEREOで放送してくれればDOLBY SURROUNDで楽しむことができました。当然、二カ国語放送の場合は、英語なり日本語なりがそれぞれがモノラルになってしまうので、サラウンドは味わうことはできません。

ドルビーサラウンド方式の弱点もこの2chの中に押し込んでいることで、後方の音の広がりが前方の音にひきづられてしまって、あまり良好ではありません。音が後ろからもなっているという感じです。それでも当時は、この映画ソースは音の分解能が良いなどといろいろな情報が飛び交い、映画を見ていました。

その後はしばらく、私自身もオーディオビジュアルの世界からは遠ざかっていたのですが、最近のDVDブームや大型画面ブーに吸い寄せられてまた戻ってきてみると、DOLBYもさらに進化をしていました。

DOLBY DEGITAL

DOLBY DEGITALという規格ではとうとう5.1chを独立に搬送できるようになっていました。DVDはこの5.1chの音声をそのまま記録できる規格になっているのですね。さすがに独立されているだけあって、後方の音にもとても迫力があります。そして0.1ch分として、スーパーウーハを付け加えたのは家庭用にはとても良い選択だったと思います。大きなスピーカーを4台も普通はおけないですよね。

さらに最近ではEXと称して、後方のセンターにさらに1ch分のスピーカーを追加して、後方の音声の中抜けを防止する仕組みもありますが、普通の家庭では後ろのスピーカーはそんなに離して置けるものでもないので、リアセンターが無くても何とかなるかもしれません。

DTS

映画音声という意味では、DTSという規格も見逃せません。DOLBYは圧縮率を高くして、音声を5.1chにしてもメディアに大きな負担がかからないように工夫をしているのですが、DTSは音質を追求して、圧縮率をほどほどにして、音の迫力を大切にしています。

確かにDTS対応DVDプレーヤー、対応AVアンプ、対応ソースの組み合わせで映画を見ると、DOLOBYとは音の次元がかなり違います。DVDメディアにDTSフォーマットが付いていたら、私は極力、DTSで鑑賞するようにしています。

DOLBYの強敵は今も現れているわけですが、今後はどのように舵取りをしていくのか、とても興味のある会社です。

ITmedia ライフスタイル:ドルビーの「これまで」と「これから」 (1/4)
“ドルビー”の「これまで」と「これから」 (1/4)
映画やAV機器のデファクトスタンダードとしてだけでなく、PCにもその領域を拡大しつつあるDolby Laboratories。日本支社長の伏木雅昭氏に、日本におけるドルビーのこれまでの歩みと、これから目指す方向性について聞いた。

【2017/05/28追記】

ドルビーAC3の特許が失効したという報道がありました。

ついにドルビーデジタル(AC-3)の特許権が消滅
映画やゲームなどの標準フォーマットとして広く普及している音声圧縮規格「AC-3」(Dolby Digital:ドルビーデジタル)について、最後まで残っていた関連特許が2017年3月20日をもって失効しました。

【2019/06/24追記】

1992年取得のDolby Digitalの特許も2017年に失効し、すでにこの特許に関連したライセンス収入は減少しています。しかし、2018年にはスマートフォンで動画を楽しむための音響技術など、モバイル機器関連のライセンス収入が急増するなど、新たな時代への対応もたゆまなく行われているようです。

研究開発費も2008年までは売り上げの10%以下だったのに対して、2018年では20%まで比率を上げていることからもわかるように、新たな技術の開発にも余念がないようです。

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