RPAが野良ロボットにならないために

RPAへの注目

最近、身の回りでRPAに関する話題が頻繁に出てくるようになりました。RPAとはRobotic Process Automationの略で、パソコン等の画面上で動作するプログラムの画面を識別して、自動的に操作してくれるようなソフトウエアです。普通はロボットというと、人形のような形のあるものを創造しますが、RPAは目に見える形はないので、ソフトウエアロボットと呼ばれることもあります。

最近になって、バズワードのようにRPAという言葉が出てくるようになりました。特に、安部政権が働き方改革を推し進めようとしている中で、働き方を変えて生産性をアップさせる手段として注目度が高くなっている印象があります。しかし、このようなソフトウエアロボットの技術は最近出てきたものではありません。記憶にある限り、1990年前後にインターネットが一般的になる前、情報収集や情報発信の手段としてパソコン通信が流行っていた時期にさかのぼると思います。

RPAにつながる過去からの歴史

当時はパソコン通信をするためには普通の電話回線を使っていたため、電話回線をつなぎっぱなしで、人間があれこれ考えながら操作していると、あっという間に電話代が跳ね上がってしまうので、電話回線に接続する前にパソコン通信でどの掲示板やどのフォーラムに行って情報をダウンロードするか、どのライブラリに行ってPDS(パブリックドメインソフトウエア)をダウンロードするか、事前に作っておいた文章をどのフォーラムにアップロードするかといったことを定義しておいて、そのうえでオートパイロットが一気に作業をするという方法が流行っていました。

その後、インターネットの一般化によりパソコン通信が衰退したほか、ADSLや光ファイバー等の常時接続回線が使われるようになったため、オートパイロットのようなものは使われなくなりました。しかし、今度はソフトウエアを自動的に試験するためのツールがソフトウエア開発業界で利用されるようになります。あらかじめ作成しておいたテストケースに従って、入力されたファイルや画面に表示された情報に従って、次の操作を自動的にすることで、いくつものテストケースを自動的に終わらせることができるツールです。特にプログラムのバグを改修したあとに、デグレードにより機能が劣化していないか?ということをチェックする回帰試験では、毎回のごとく同じテストケースを試験することになるので、テスト自動化ツールが活躍してくれています。

また、OUTLOOK等のメールソフトでも、仕訳けルールという仕組みがあります。メールが自分に送られてきたら、大事な人からのメールだったら赤くするとか、どこのフォルダに分類しておく等、メールをたくさん処理しなければいけない人にとっては便利な機能が満載です。これも簡易なRPAのようなものだと思って利用しています。

RPAに興味を持てるかどうか

このように、RPAの元となるような技術は以前からありましたが、それらの技術をもとに、事前のプロセスの定義をより簡単にしたり、いろいろな環境で動作できるようにしたりする中で、注目されるようになったのでしょう。直観的に操作できる製品も多く、短期間のトレーニングで利用できるようになると言われています。特にパソコンで表示された情報に従い、繰り返しチェックをしたり、操作をしたりするような場面では、RPAを使ったことに伴う効果は大きくなると思います。

ただ、手元のソフトウエアにOUTLOOKの仕訳ルールのような便利機能があったとしても、それを知らなかったり、知っていてもあまり利用していなかったりすることも、たくさんあると思います。コンピューターの操作に慣れているはずのシステムエンジニアであっても、試験自動化ツールの存在は知っていても、旧来のように手作業で試験を続けてしまうことも多々あります。結局はその手助けをしてくれる仕組みを活用することに興味を持てるかどうかにかかっています。

自らがRPAそのものに興味があまり持てないと、企業などの団体では誰か長けた人がRPAで仕組みを作って、いろいろな人に使ってもらうような形になりますが、その長けた人も同じ部署に長年勤め続けるわけにはいかないので異動などを機にして、RPAで定義されている中身を知る人がいなくなり、いわゆる野良ロボットにつながってしまうことになります。RPAに限らず、各企業等で基幹業務等のために製造されてきたプログラムは莫大な量になっている場合があり、インフラ等が老朽化して新たなインフラに乗り換えるときに、そのプログラムの中身が判らなくなってしまい、なかなか新しいインフラに乗り換えられなくなってしまう事例が多々あります。野良ロボットが増えると、RPAに関してもまったく同様の状態になってしまう恐れがあります。特に野良ロボットに関しては、知らず知らずのうちに届いたメールを間違った宛先に転送してしまうといった問題が発生し始めているとも報道されています。(2018.7.12 日経産業新聞 勝手に悪さ、管理者不在リスク)

定石としては、RPAに関しても管理者をしっかりと決めて資産の中身がいつでもわかるような状態にしておこうということになりますが、RPAはどちらかというと、個人が自分の作業を簡単にできるようにするためにプロセスを蓄えていくものでもあるので、基幹システムのプログラムのように管理者を決めたとしても、中身がいつでもわかるようにしておくことは難しいようにも思います。とすれば、RPAをいろいろな人が興味を持って使うことができるような状況を作っていかなければいけないと思います。

学校教育

昔を振り返ってみると、職場にパソコンが導入され始めたのは、1980年代後半、PC-9801が全盛だったころだと思います。当時は各職場に1台とか2台とかの共用パソコンが配置されて、パソコンの操作に慣れている人だけが使っている感じでした。その後、OASISなどのワープロ専用機が職場から無くなって、一太郎などをインストールしたパソコンで作業をするようになり、さらにはメールソフトが導入されて、従業員一人一台の環境へとつながっていきました。たぶん、10年程度かかったのではないかと思います。この10年の間では学校教育の中にパソコンを扱う授業が取り入れられたりして、パソコンを使うことができる人材が増えたことも一役かっていると思います。

今回の働き方改革では、パソコンは単純に使うことが目的ではなくなり、人が知的創造性を発揮するためのツールとして活用されていく形に変化する形になります。とすると、働き方変革を成功させるためには、学校教育の中でもワープロに慣れるようなパソコンを使う授業ではなく、RPA等を使って自分でやらなければいけない作業を楽にすることに興味を持てるような授業にしていかないといけないのかもしれません。

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