楽天によるモバイルキャリアへの参入

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楽天は第四のモバイル通信キャリアになることを目指して活動を進めています。今までも、NTTドコモやauの回線を使ったモバイル事業は手掛けていましたが、他社の回線を借りるというビジネスモデルでは他社との差別化をすることにも限界があり、自らが回線を持つ道を選択しました。

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発表当初は株価低迷

発表した当初は既に3社のキャリアがシェアを取り合っているレッドオーシャンの市場に後から参入しても、まったく勝算が無いのではないか、設備投資は本当に財務基盤上、耐えることができるのかといった不安から、株価が低迷していたこともありましたが、最近は幾分、株価が持ち直してきています。市場が楽天の戦略に持っていた違和感が少しずつ取り払われているということかもしれません。

楽天は日本全国で一気に設備投資が整うわけではありません。最初は採算がとりやすい人口密度が高い地域から投資を進めていき、徐々に全国に広げていきます。当初は4Gネットワークを東京、名古屋、大阪の3地区を自社ネットワークで構築することが決まっています。従って、楽天がキャリアとしてサービスを始めたあとも、自社が未サポートの地域が残ることになりますが、その領域はauが既に協力することを表明しています。

自社の回線を提供するサービス開始時期は2019年秋を予定しています。4月1日付で楽天はグループ再編を実施して、従来からのMVNO事業については楽天モバイルに継承しました。徐々に準備は整ってきていることを感じさせます。

完全仮想化されたネットワーク基盤

ZDnetの報道を見ると、そのネットワーク基盤に関する紹介がされていました。従来のキャリアが持っているネットワークの基盤はどちらかというと特注の機器で構成されることが多くハードウェアコストが非常にかかるものだったのが、楽天が目指す携帯電話ネットワークではクラウド、オープンソフトウェア、仮想化技術を利用した、ハードウェア価格を低廉化させるための取り組みがなされているとのことでした。これにより基地局に設置される機器の設置スペースも減って、基地局を設置するときの柔軟性が増すとされています。

ビジネスインサイダーの記事によれば、今までの携帯電話会社は、エリクソン、ノキア、ファーウェイなどから携帯電話のネットワークを構築するための機材を購入していました。これらは携帯電話事業者向けに開発された専用機器であり販売先がかなり限定されているため機器のコストが高額になってしまうと書かれています。

仮想化基盤ではDockerを利用してクラウド上で多数のコンテナを動かしてサービスを構築します。今まではハードウェアに実装されていた機能をソフトウェアに切り出してしまい、汎用的なサーバーで運用できるような試みです。これならばネットワーク専用機器を購入する必要が無くなり、シスコやデル、HPといった汎用サーバーで運用できるようになります。サービスをコンテナに分割してマイクロサービス化することで、迅速にサービスを立ち上げることができるとしています。

この構成で安定したサービスを提供することができるか否かが最大の焦点となりますが、楽天では「楽天クラウドイノベーションラボ」で徹底したシステム構築とテストを行うことで品質を確保しようとしています。クラウドイノベーションラボでは基地局や電波暗室、サーバー、オペレーションルームなどが揃っていて、特に外国人のスタッフも多く働いている環境になっているようです。

楽天モバイルがMNO回線への移行を案内

3月14日に楽天モバイルが自社公式サイトに「楽天モバイルのネットワークは自社回線への移行を予定しております」という案内を掲載しました。2019年3月14日10時以降の新規契約分については、10月以降順次、楽天モバイルが提供するMNO回線を利用することができるSIMカードを自動的に送付するとしています。この切り替えに関する主な注意点は、プランと最低利用期間は継続、SIMカードを好感しない場合は従来のMVNOサービスを継続利用可能、一部のオプションサービスは継続できない場合がある、利用環境によってはSIMカードが送付されない場合があるの4点です。

問題は対応周波数帯との兼ね合いで対応する端末の機種が限られていることです。3月14日時点では下記の端末が対応していることを楽天モバイルは公表しています。

  • AQUOS R2 compact SH-M09
  • AQUOS sense2 SH-M08
  • AQUOS sense plus SH-M07
  • AQUOS R compact SH-M06
  • AQUOS sense lite SH-M05
  • HUAWEI nova lite 3
  • OPPO AX7
  • OPPO R17 Pro
  • OPPO Find X
  • Aterm MR05LN

今後、対応機種は増えていくものと思いますが、日本ではシェアが大きいiPhone等、もう少し選択の幅が広がらないと、利用者を大幅に増やすことが難しいように思います。

消費者の関心を高めるには

料金プランに関しても、今の楽天モバイルが提供しているMVNOでのプランを踏襲する程度では、価格的なインパクトはあまりありません。普通にWEBを見たりメールやLINEのやりとりをする程度であれば、楽天以外のMVNOが提供している安い料金プランで十分に実用的です。

実効的な回線速度が信じられないほど早い、データ通信量の制約が2倍になった、楽天TV等、楽天が提供するコンテンツ提供サービスが無料で利用できる、またはコンテンツのデータ量は料金に加算されない等、消費者が驚くようなインパクトのあるサービスが同時に提供しないと、なかなか消費者の心には響かないのではないかと思います。

【2020/02/13追記】

楽天が2月13日に発表した2019年12月期の連結決算によれば、最終損益が318億円の赤字になったとのことです。投資先の米ライドシェア大手リフトに関連して巨額の減損損失を計上したほか、携帯事業への先行投資が響きました。携帯事業については無料でのサービス提供となっており、現時点では売り上げに結びついていませんので当初計画に比較して収支に与える影響も大きいのでしょう。

4月からの本格サービスの開始によって、どのような価格体系でサービスが提供されるのか、サービスの品質がいかがなものなのかが気になるところです。

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