終身雇用制度の行方

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トヨタ自動車の豊田章男社長が記者会見の中で「今の日本を見ていると雇用をずっと続けている企業へのインセンティブがあまりない」、「現状のままでは終身雇用の継続が難しい」という見解を明かしたのが色々なところで取り上げられています。また、経団連の中西会長も定例会見の中で「企業からみると一生雇い続ける保証書を持っているわけではない。制度疲労を起こしている。終身雇用を前提にすることが限界になっている」と発言しています。

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終身雇用制度の現状

日本においては会社は家族のようなもので、一回、採用したら定年まで同じ会社で働き続けるという文化が強く根付いてきました。昭和の時代の高度成長期のような大量生産で品質の良いものをたくさん作って、全世界で販売するような時代にはうまく機能していたと思うのですが、平成になってからは確かに制度疲労を起こしているようにも見えます。

最近ではGAFAに代表されるように、創造的なサービスをグローバルに展開して大きな収益を得る企業が大きく伸びています。Appleも一見はiPhone等のハードで儲けているように見えますが、実はiTunesやAppStoreなどのコンテンツ販売サービスでも大きな収益をあげています。

このような全世界で受け入れられる新たなサービスをうみ出すには、どんどん進化するIT技術を駆使することで顧客の期待に応える何かを実現できないかと発想し続ける力や、いろいろな事業に携わることで得られる幅広い知見や人脈などがどうしても必要になってしまいます。

終身雇用制度の限界

終身雇用が前提になってしまうと、会社の中でのある部署における経験を主に積み上げていく形になってしまい、どうしても知見や人脈の幅が限定的になりがちになってしまいます。社内で配置転換を実施しても、やはりグローバルで戦っていくだけの知見の幅を広げることがでいません。また、米国や中国等、諸外国ではより高みを目指して人が会社間を流動していると一つの職場に色々な知見を持った人が集まり、その環境の中で新しい付加価値が生まれる、つまりダイバーシティを活かした経営をしていることと比較すると、かなり違うことだけは確かです。

また、同じ会社でずっと雇い続けてくれることを前提に考えてしまうと、危機感が薄れてしまうので、その職場の中である程度の力を身に着けて、ある地位を築いたところで安心し知的向上心が薄れてしまう人も出てきてしまいます。本当は能力がある人が厳しい環境にさらされることなく、コンフォートゾーンで落ち着いてしまうことは、本当にもったいないことだと思います。

経営哲学との関係

日経ビジネスで健康社会学者の河合薫氏の記事がありました。経営者が社員を路頭に迷わせないという強い信念と思いを持ち、従業員がこの会社で頑張って働こう!と一致団結して成果を上げてることが大切だと論じているのは、まったくその通りだと思います。しかし、もはや、日本の企業が国際競争力を上げるためには、「この会社のために頑張ろう!」という視野では勝負にならなくなっていることが課題だと思います。

かといって、日本が培ってきた終身雇用制度をリセットして、諸外国のような雇用制度にすれば良いかというと、それも違うと思います。同じことを後追いでやっても勝負にならないでしょう。日本の今まで培ってきた良さは残したうえで諸外国と対等以上に戦う仕組みが必要です。

企業任せだけでは難しい

一つのヒントは豊田社長の「企業へのインセンティブがあまりない」という発言にあるようにも思います。今は国際競争力を高めるための努力を一つ一つの企業に頼っている部分が多いと思うのですが、国と各企業の連携がもう少しあっても良いと思います。Society5.0の実現等、国としても大切なコンセプトを持っているので、これを具現化するためのもっと現場よりのワーキンググループがあっても良いかもしれません。

また、副業ということももっと奨励して良いとも思います。転職という手段をとらなくても、才能のある人が知見を広げる機会を得ることができて、国や世界がよりよくなるための付加価値を創造できるような仕組み、それがどんなセーフティネットの上で構築できるのか試行錯誤をもう少し続ける必要がありそうです。

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