日経XTECHの「21年以上前のオンボロ基幹系」という悪意に満ちたタイトル

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日経XTECHで「21年以上前のオンボロ基幹系を使う企業が2割超、迫る2025年の崖」という記事が公開されました。

21年以上前のオンボロ基幹系を使う企業が2割超、迫る「2025年の崖」
「企業IT動向調査2019」では、基幹系システムやマスターデータの整備状況について調査した。基幹系システムやマスターデータの整備が進んでいる企業もあるが、そうでない企業も少なからず存在することが分かった。

日本情報システムユーザー協会が公開したレポートを元にした記事です。

記事の中では構築から長時間経過したシステムを抱える企業が少なくないこと、システムのサイロ化や硬直化などの課題を感じていることがデータを元にして解説されています。

記事の中は公表されたアンケート結果の数字を用いて淡々と説明しているだけの記事なのであまり違和感が無いのですが、表題の「オンボロ基幹系」という言葉はあまりにも世の中の経営者等を煽っているだけで、あまり本質は表していないのではないかと思いました。

ハードウェアを21年使い続けたら、それはいつ壊れるか分かりませんから、ハードウェアは五年に一回等の周期で入れ替えているものと思います。多分、採用しているアーキテクチャやアプリケーションを抜本的に構築したのか21年以上前ということなのでしょう。

アーキテクチャ的に基幹系で蓄積されているデータの活用が行いにくいことは確かに分かるのですが、「情報システムはサイロ化しており、データの連携が困難でデータ変更は運用者が個別に対応している」が21%あるという部分、今ひとつ理解できません。

基幹系たるSORとデータ活用の基盤たるSOEの考えに基づいて、SOEを司るシステムと正確に原本データの同期が行われていれば、基幹系のレガシーなアーキテクチャに問題はないはず。もしも、基幹系のデータを活用しやすいようにインターネットなどに安易に接続したら、セキュリティの面で逆に心配です。

もしも、アプリケーションを21年以上使い続けて、機能追加を繰り返すうちに、ドキュメントとプログラムが一致しなくなっていたり、田舎の旅館の建て増しのような状態になってしまっているということであれば、それはシステムの開発体制やプロセスなどの問題で、システムを作り変えても、また問題は再発します。

元となるJUASの公開資料も読みましたが、「オンボロ」といった煽るような表現は一切ありませんでした。

購読者の目を引くタイトルを付けたいという気持ちが先行して、誤解を生むような大げさなタイトルをつける日経XTECHの姿勢は見直されるべきだと思います。

【2019/07/19追記】

日本経済新聞で「企業に迫る2025年の崖とは?」という記事が掲載されました。経済産業省の和田憲明氏に聞いた内容を記事にしたという形になっています。

経産省がデジタル化を推進する報告書「デジタルトランスフォーメーションレポート」を2018年9月に公表していることが紹介されています。さっそく、読んでみました。

サマリーの先頭で、2025年の崖に関する課題は以下のように定義されています。

  • 既存システムが事業部門ごとに構築されて全社横断的なデータ活用ができなかったり過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化、ブラックボックス化
  • 経営者がDXを望んでもデータ活用のために上記のような既存システムの問題を解決し、そのためには業務自体の見直しも求められる中、現場サイドの抵抗も大きくいかにこれを実行するかが課題となっている
  • この課題を克服できない場合、DXが実現できないのみではなく、2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性

また、レガシーシステムを下記のように定義しています。

※レガシーシステム 老朽化、肥大化、複雑化、ブラックボックス化したシステム

第一回の会合における配布資料を見ると、「技術的負債」の定義は「短期的な観点でシステムを開発し結果として長期的に保守費や運用費が高騰している状態のことを指す。本来不必要だった運用保守費を支払い続けることを一種の負債ととらえている」としています。

技術的負債の例を、「メインフレーム」、「中途半端なオープン化によるメインフレーム資産、IAアーキテクチャのオンプレハード」、「オンプレの単純なクラウド化」を挙げています。

なんとなく、企業システム等で「最適化」の潮流を巻き起こして、そこで利潤を追求するなにかの力が背景にあるような気もします。

結果として、DBMSでORACLEが大多数のシェアを占めて、企業は高い保守料に苦しみ、日本メーカー製のDBMSが採用されにくくなってしまったといったことに繋がらなければいいのですが。

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