地方鉄道 “輸送密度1000人未満” 目安でバス転換含め協議へ

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赤字が続く地方鉄道を今後どうするのか、そんな課題を検討している国(国土交通省)の検討会が輸送密度1000人未満を目安にバスへの転換も含めて国が中心になって沿線の自治体や事業者と協議を進めるべきだという提言をする方向で整理していることがNHKで取り上げられていました。

ローカル線 いすみ鉄道 ポッポの丘

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輸送密度1000人とは

輸送密度1000人というのは1日の輸送者数が1000人ということに相当します。

全国の地方鉄道は人口減少の波に加えて、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って乗客数が大きく減っていて、多くの鉄道事業者が赤字に陥って存続が危ぶまれています。

輸送密度1000人未満の区間はどれだけあるのか調べてみました。2020年度の数字では約120区間あります。

こちらはその中の一部を列記した例です。数字は2020年度の輸送密度です。

  • 小海線 小海~中込 978
  • 石巻線 小牛田~女川 953
  • 鹿島線 香取~鹿島サッカースタジアム 952
  • 日南線 田吉~油津 934
  • 根室線 帯広~釧路 897
  • 後藤寺線 新飯塚~田川後藤寺 890
  • 豊肥線 豊後竹田~三重町 853
  • 宗谷線 旭川~名寄 827
  • 山陰線 浜坂~鳥取 798
  • 水郡線 磐城塙~安積永盛 796
  • 土讃線 須崎 ~ 窪川 783
  • 小浜線 敦賀~東舞鶴 782
  • 三角線 宇土~三角 775
  • 唐津線 唐津~西唐津 766
  • 五能線 東能代~能代 761
  • 姫新線 播磨新宮~上月 750
  • 左沢線 寒河江~左沢 742
  • 日豊線 都城~国分 728
  • 山陰線 出雲市~益田 725
  • 関西線 亀山~加茂 722
  • 播但線 和田山~寺前 714
  • 奥羽線 大館~弘前 701
  • 羽越線 村上~鶴岡 697
  • 上越線 水上~越後湯沢 687
  • 陸羽東線 古川~鳴子温泉 666
  • 姫新線 津山~中国勝山 663
  • 羽越線 酒田~羽後本荘 645                       等

このように多くの区間が輸送密度1000人以下に該当します。

協議に際しては廃止や存続を前提とした議論ではなく、国交省担当者は「基本原則は自治体が検討すべきだ」と強調しています。利便性の向上による乗客増の模索、バスやバス高速輸送システムの導入可否を検討します。

ただ、人口減少の波が押し寄せる中で、道路以外に鉄道やBRTの路線を維持すること自体が困難な場合が多いのではないかと思います。

当座はバスによる運転で凌げたとしても、全国でやはり経営危機でバスの路線が減少していますので、バスによる代替も暫定対処にしかならず、長期的な視点では交通手段がない集落に対する抜本的な対策が求められることになります。

人口が増加している時代は宅地建設や鉄道建設など、どんどん作る政策を推し進めることで対応できましたが、人口減少時代では国や自治体には難しい舵取りを求められます。

【2022/07/29追記】

JR東日本が初めて路線別の収支を公表

JR東日本が7月28日にローカル鉄道35路線66区間の収支を初めて公表しました。在来線の1/3に相当していて、全てが赤字であることが明らかになりました。

100円の収入を得るのに最もお金がかかっている(営業係数)のはコロナ前の2019年度、千葉県の久留里線で1万5546円を要しています。2020年度ではさらに営業係数が大きくなっている路線が現れています。

今後、鉄道の維持をしていくのか、代替手段に切り替えていくのかについて、活発な議論につながっていきそうです。

【2022/08/09追記】

秋田県知事がバス転換に理解

本日の報道で、秋田県知事がバス転換に理解を示したという報道がありました。具体的には下記のように発言されたとのことです。

人口が縮小し、持ちこたえていくのは無理。バスの代替輸送はやむを得ず、それもできないところをどうするか個別の検討が必要だ

もはや、地方で人口増加や鉄道利用者の急増につなげるような施策を打つことも難しく、かつ沿線自治体が金銭的に支援することも財政的に困難です。

もはや、都心でもコロナ禍の影響で間引き運転されている状況なので、秋田県知事の発言は重みがあると思いました。

【2022/08/15追記】

路線バスもこの2年で赤字が3700億円

路線バスにも暗雲がかかる報道が日経でありました。路線バスも2020年度から2021年度の2年間で営業終始が推定3759億円の赤字とのことです。新型コロナウイルス感染拡大前の10年分の損失に相当するということなので大変な赤字額です。

鉄道の収支がとりにくい場所でも安易にバスに転換すれば大丈夫ということにはなりません。今一度、公共交通機関の利用に関して見つめ直すべき時が来ています。

【2022年10月1日追記】

赤字ローカル線のイノベーションプラン

経営コンサルタントの大前研一氏がマネーポスト誌の取材に対して、「乗車区間の営業キロなどで規定されている運賃を、通勤や通学、沿線在住の高齢者などを除きもっと高くすれば良い」と語っています。ノルウェーのフロム鉄道が念頭にあるようですが、ちょっと議論に無理がありそうな気がします。

例えば、小海線はとても風光明媚な高原を走りますが、今でさえ観光客が利用しないのに、鉄道運賃を値上げしたら、さらに利用者が減るように思えてなりません。並行する国道を車で走った方が価格も安いですし好きなときに走れます。

値上げすれば大丈夫というのは少し疑問が残ります。

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